A chair for scribes

 

12世紀のロマネスク(コンプレスト)体

ミューズしろものホワイト155kg・ガッシュ・金粉

 

20022月 第30回記念 國際書道連盟展 入選作品

 

この作品は12世紀ごろに流行った、書家の為の机付きの椅子についての内容です。

中性の写本などの中で、このスタイルの椅子に座った書家の細密画が時々みられますよね。

本文の中にも「12世紀頃には・・・」というくだりがあり、その時代の書体やデザイン方法を使うと、やはり雰囲気が出ます。

 

左の写真は、文頭の の飾り文字です。

この時代は、多くの写本が作られ始めた華やかな時代でした。

中でも12世紀は、色使いやデザインが特徴的で、似た雰囲気の写本が多く残っています。

写真の飾り文字は、基本の色合いを再現して描いていますが、どれも自然の材料から作ったとは思えないほど鮮やかです。

 

さらには、この頃、細い線で書かれたフィリグリーと言う装飾方法が好まれていたようです。

伸びやかな細い線で、植物模様やや守り神(?怪物?)などを表していますが、デザイン化されている物が多く、パッと見ではわからない事があります。

私はフィリグリーが苦手で今はこのレベルが限界ですが、いつかきちんと学びたいと思います。

それまでには、羽根ペン・・・にチャレンジしてるはず!

 

さて、右下の写真は、2段落目の文頭の頭文字Beforeの「B」の飾り文字です。

文書の内容にあわせて、「机付きの椅子」の挿し絵を組み合わせてみました。

かなり強引に組み込みましたが、どうでしょう。

何とかまとまっているでしょうか。

 

文字は、羊皮紙などがとても貴重になってきた時代背景を反映して、それまでの丸みを帯びた形状から、細く潰されたようなスタイルになってきました。

その形状から“コンプレスト(圧縮された)”書体とも呼ばれています。

初期ゴシックでも、目にする機会が多いですよね。

本格的なゴシックへの移行期で、写本も数多く作られた時代ですので、似た雰囲気で書かれた写本もたくさん残っています。

 

この書体の大文字は、「B」に続く赤文字の部分に見られます。

大変シンプルで美しいスタイルだと思いますし、私はとても好きです。

小文字では、左の写真からも分かるように、曲線部分が斜めに向かっている点と、縦線の入り始めの小さな三角セリフが特徴的です。

ここからもっともっと押しつぶされて、斜線が無くなっていき、文字のほとんどが縦線のみで構成されるようになると、有名なゴシックテクスチューラ(通称ブラックレター)になるのです。

 

それにしても まだ未熟ですね、この文字。

拡大してみてガックリです。

この作品はずいぶんと前に作ったものですので、今となっては「ああ・・・」と思う所もたくさんあります。

しかしどの作品もそうですが、作ったその時その時の、一番の技術と思いが詰まっています。

どんなに未熟な仕上がりでも、心を込めて一生懸命作った記憶があるので、手放したり、どこかにしまいこんだりできずにいます。と言っても、「今だったらもっと上手に作れたのになぁ」とも思いますので、自慢気に見せるのもなんだか恥ずかしくて・・・こまります。

こうやって作品はどんどん溜まって行き、私の部屋を侵食していくのです。

 

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