“Love Letter” ( 2004 )

 

メロヴィンジアン キルデベルト三世(Childebert III)の事務書体

羊皮紙(子ウシ)・羽根ペン・酸化鉄インク・ガッシュ・金箔・封蝋

 

初めての羊皮紙作品です。

果てしなく長く思えたメロヴィンジアン体のクラスも、とうとう3期目・1年を終えようとしています。

 

この1年で、ずいぶんと多くの書体を身につけました。

文字の他にも飾り文字を始めとしたイルミネーション技法をいくつか。

そして3期目最初のプロジェクトが「羊皮紙の扱い方」と「シーリングワックス」です。

 

初めての本物の羊皮紙に興奮し、カリグラファーとしての新しいステップに身の引き締まる思いがしました。

記念の羊皮紙初作品ですし、子牛の上質な羊皮紙でしたので、金箔と飾り文字で華やか仕上げています。

 

今回の課題は「ラブレター」です。

メロヴィング王朝時代の文字の中でも、キルデベルト三世の時代に使われていた事務書体で書いています。

本来は尖ったペンで書き、細い文字ラインで早く表現する書体ですが、少し幅のあるペンでていねいに書くアレンジにしてみました。

ルクソイの整然とした雰囲気とは違う自由さが好きです。

さて、今回私が、いくつかの宿題の例文の中から選んだのは、この文章です。

 

もし あなたが夢を見る人なら 私はあなたの夢になりたい。

でも もしも あなたが目覚めようと願うなら そのときは 私はあなたの希望になりたいのです。

あなたのyayoより   』

 

この眩暈がするほどの甘い甘い愛の言葉は、この作品を作った時の私の気持ちにぴったりだったのでした☆

 

次にイルミネーションですが、下の画像は 文頭の飾り文字“ IF ”の拡大写真(一部)です。

にはピンクのバラの蕾、Fの横線に葉っぱを。

“ピンクのバラ” には、「美しい少女、上品、気品、しとやか」に加えて、「私の心は貴方だけが知っている」という、花言葉があります。

“バラの蕾” は「恋の告白」という花言葉。

そして、ラテン語のSub Rosa に見られるように、 “一本のバラ” には 「秘密は守られる」 というニュアンスが。

好きな人にだけ気付いてもらいたい 恋する気持ちを、この一輪のバラに込めてみました。

 

花言葉には、昔々の人々の思い出や印象、それから、その花に関わった 誰かの「物語」があるものです。

この花言葉が生まれる裏に、どんなロマンティックな言い伝えがあるのでしょうね。

思わず遠い昔の人々の思いに、今を生きる私達と同じ気持ちを見つけてしまったような気がします(^−^)**

 

さて、今年は去年のイルミネーションの中級クラス以来、増えすぎた色の知識に負けて、迷い続けた一年でした。

この作品で、やっと迷いが解けて、素直に色を作る事ができるようになったように感じています。

こうやって自分の使いたい色を覚えていくのかな。

さて、右の画像は、最後のサインと、溶かした蝋を使って押す印・シーリングワックスです。

蝋か鉛で押していたそうで、手紙や通達文で目にします。

シーリングワックスは今までにも使ってきましたが、キレイに押せるテクニックを学ぶ事ができました。

 

普段は 「インク壺に羽ペン」 を愛用しています。

今回はラブレターですので、Your Yayo(あなたのyayoより)に、イニシャル“ ”の印を押しました。

蝋をマーブルにする方法も学びましたが、この作品では情熱の赤一色で。

今回は、既製の印を使いましたが、いつかきっと!自分の書いた文字で、誂えたいです。

 

ところで、実は、この作品に関しては、「羊皮紙である」という事以上に戸惑った事がありました。

それは、本文を、いわゆる「インク」の一種で書いたという点です。

今まで、インクは練習用としてしか使用せず、作品には必ずガッシュを使用して仕上げていましたので、後に残す作品をインクで書くことには多少(・・・?かなり!)抵抗がありました。

 

しかし、今回は羊皮紙と相性の良い 「酸化鉄インク」 というインクを使用して作品を仕上げてみました。 

* * イルミネーションの部分はガッシュです。

 

次に取組む最後の課題は、ミニアチュールと長文のレイアウトのプロジェクトで、大きな羊皮紙で仕上げます。

とうとうヤギ一頭分の羊皮紙を買っちゃいました(*o*)☆

時間をかけて、丁寧に、今までの集大成作品を仕上げたいと思います。

 

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