Isti Canones…” the book of Kells

 

インシュラーの草書体

ファブリアーノ細目・ガッシュ・金箔

 

20042月 第32回國際書道連盟展 特選賞受賞作品

 

6世紀末に登場した小文字書体で、公式文書や正式な宗教書に使用された小文字書体の中では最古といわれています。文字の連結や省略・延長などを多用する楽しい書体。イギリス・アイルランドなどの北の島国(インシュラー)の文字の為、このように呼ばれます。

この作品はラテン語の文章で、この書体も使われている、有名な「ケルズの書」の一説の引用です。一番最後のページ、一番最後の段落を、私なりにイメージして仕上げました。「ケルズの書」の内容について「この書物は、ニケアの地にて、ニケアの民に認められ作られた」という内容です(・・・確か)。

左は、文頭の単語ISTIの飾り文字です。当時好んで使われていたケルトの組み紐模様をデザインし、偉大な書に敬意をはらって金箔を盛り上げて施しました。

の飾り文字に組み入れて描いた花は「アガパンサス」と言います。

私はお花が大好きで、よく作品に使いますが、草花を描く時には、必ず花言葉などを調べて、使う図柄を選ぶようにしています。

この花はギリシャ語のアガペーagape(愛)とアンサスanthos(花)に由来する名前を持ち、「神の慈愛」などの花言葉を持っています。

この作品の内容にピッタリだと思い、飾り文字に入れるお花に選びました。よく見かける花ですが、花言葉を知って「あぁ、なるほどね。」と思える、清らかなお花ですよね。

本文のインシュラーの草書体はとても優しい印象の美しい文字ですが、生活に近いところで発展した文字である為、独特で複雑なスタイルを数多く見る事が出来ます。

右下の画像の最初の単語、2行目の黄色に塗ってある部分、一番下の行の緑に塗られた文字などは、典型的な連結(リガチャー)や引伸ばしの方法ですが、デザイン性もあって面白いですよね!

知らなければ読み解くのが困難な、珍しいスタイルですが、アレンジによっては個性的にも、力強くも、エレガントにも仕上げられるのが魅力です。個性が出やすい書体とも言えますよね。

私も 流暢に流れるような表現のために、ありとあらゆるタイプのリガチャーやレイアウトを検討して、この作品に生かしました。

実は以前は全く興味の無い書体でした。「難しいらしい」というのも理由でしたが、文字の歴史に ほぼ沿って学んできた私が、かなり後まで、受講を引き伸ばしてきた書体なのです。でもいまは、とてもとても好きです。

「何が書いてあるのか わかりません」と言われても、こういう魅力には 勝てないのです。

さて、本文とは別に、一番下の本文をサポートする位置に、次のような一行を加えました。それも ちょっと見てください。

小さくて、少し見づらいでしょうか。前半は「『ケルズの書』からの引用です。」という意味で、ここは英語表記。後半「私こと、yayo20023月に書きました。」をラテン語で。

カリグラフィーを始めて、3年目の作品ですが、それまでにも ずいぶんと多くの作品を作りました。たくさんたくさん作って、やっと少し 納得できる作品が作れるようになってきた時期の作品でした。

はじめの頃は、作っても作ってもガッカリするばかり。

納得した作品全てに、このようにきちんと署名を入れるわけではありませんが、「名前を書こう」と思った時の気持ちを忘れずにいたいです。こうやって ひとつずつでも、自分で眺めてガッカリしない作品を増やしていきたいと思います**

 

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