「自画像」

 

ミニアチュール(細密画)

アルシュ細目・ガッシュ・金箔・金粉・卵白・その他

 

 

イルミネーション中級の授業の課題は「自画像」でした。

自分を描くなんて、よく描くのも悪く描くのも余り気持ちがいいものではありません。

少しでも似るように、努力しましたが、今の私にはこれが限界かも?

 

似ている・似ていないは別として、習った多くのテクニックを使って、華やかに仕上げました。

 

 

大きな金箔の「Y」の中に自分が立っています。

右手にはカリグラフィーを意味する羽根ペン・左手には知識を象徴する本を持っています。

本の、イニシャルと紙の背の部分は、金粉で仕上げました。

ベージュの背景は卵白でテンペラし、金粉の模様を入れてあります。

服装をハカマ姿にして、日本人カリグラファーとしての自分を表現しました。

羽根ペンと、紋章は、上薬をかけて光沢を与えました。

上の写真の羽根ペンと、左の写真の紋章、2箇所だけがテカテカ光っているのが見えるでしょうか?

 

今回のミニアチュールの技術には、背景の細かい模様も含まれていて、紫2色(テンペラ画法)と金箔で仕上げた背景は、とても神経をつかいました。

まずそれぞれを3mm四方に塗り、すべてを紺色で縁取り、最後にその上から細い線を白でひいています。

中世写本の中でよく見る背景のスタイルですが、色使いや模様の入れ方に、個性が出ます。

今回は3mm四方ですが、古い写本の中には、もっと細かい背景模様に、さらに金などで繊細な模様を入れてあるものまでありますよね。

 

まだまだ未熟な部分の残る作品ではありますが、本当に本当に時間をかけて作ったので、とても思い入れがあります。

大変でしたが、それでもやっぱり文字よりは神経を遣うことはありません。

文字は神経をすり減らしながら書いていますので・・・。

それでも私には、色塗り・挿絵のデザインなど、文字以外には苦手意識やコンプレックスのようなものがあります。

みなさん褒めてくださいますが、本当に、毎回眠れないほどの産みの苦しみなのです。

カリグラフィーを始めるまで、学校の美術でも まともな成績をとったことの無かった自分。

ありのままにデッサンする事も出来ず、もちろん自由に想像してそれを描く技量も無い。

色に関しても、知識も天性のセンスも無いことは、はじめから分かっていましたが、この伝統ある美術の世界に入ってすぐ、あらためてイヤと言うほど思い知らされました。

いつか、なんの不満も無い作品を仕上げる事のできる日が来るのでしょうか。

まずは、逃げ出したくなる気持ちに負けない事ですよね。

 

今回のこのクラスで、色やギルディングテクニックはもちろん、その他多くの新しい技術を身に付ける事が出来ました。

絵筆を持った事の無い自分へのコンプレックスが 少しだけ楽になった気もしています。

これからの作品に、これらの技術を活用していきたいと思います。

 

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