“SONG” Thomas Campbell

 

15世紀フランスのバスタルダ書体・カデルス体

ファブリアーノ細目・羽根ペン・ガッシュ・金粉

 

羽根ペンの2期目の作品です。

トマス・キャンベルの愛に関する情熱的な詩を見開きの本の形にしました。

ちゃんとフライリーフも表紙も付いていますが、かなり簡易的なスタイルの本です。

 

“A Cradle Song”と同じ書体ですが、あちらは「飾り文字&シンプル文字」に、この作品では「単色&金彩無し&出来る限り当時のテクニックを駆使した文字」で作りました。

同じ書体ですが、少し雰囲気が違うと思います。

特に本文一番上の行は、余白にさえぎるものが無く、いくらでも上に伸ばす事出来ます。

そこで、カデルスと呼ばれる派手で装飾的な書き方で華やかさを出しました。

このタイプの写本も多く残っていますよね。

 

左の写真は、本分の最初の大きな頭文字です。

Gallery〉ページの全体図をみていただくと、右のページにも大きな文字があるのが分かると思います。

 

カデルスは長く伸ばしたり、階段状に交差したりする書き方が特徴的です。

単色で作っても、これだけの文字を書くと、だいぶインパクトがあります。

画数も多いので、バランスは重要☆

確かに慣れるまでは難しいのですが、羽根ペンを使いこなせるようになると、思い切って書くのは心地好いものです。

遠くの目標に向かって「・・・・・・っえい!」という感じです。

勢いと思い切りは大切(^−^)♪

要は度胸です**

 

左の画像では、細かいチリチリッという飾りや「丸に点(?)」も着いています。

これはペンの角を使って書く、ちょっと珍しいテクニックです。

カデルスを使うときのポイントは「丁寧にペンをカットする事」と「ペン先を硬すぎず柔らかすぎす、弾力のある良い状態にキープしておく事」などでしょうか。

もちろんこの2つは「羽根ペンを使いこなす為の基本」でもありますが、これがなかなか難しいものなのです。

そのためまずは羽根に慣れて、それから初めてカデルスの練習に入る必要があります。

「目指すところは、すぐ手に届かないからいい!」とは、簡単に言えないくらいの遠い道のり☆

 

右の写真は、小文字のアセンダー用の装飾が豪華です。

このスタイルも大好き!

こちらは頭文字ではありませんし、アセンダーのみの装飾なので、上の画像ほどには派手ではありません。

でも、上の空間を埋めたり飾ったりすると、ただのテキストがグッと「特別」になりますよね。

これらは、十分な高さが必要です。

ちんまりと書くと、やはりエレガンスに欠けますよね。

大きな文字なので、できるだけ遠くから見て、全体のバランスが崩れないようにするのも、とても大切なことです。

もちろん「野暮ったい」印象にしない為にも、細くて繊細な線は重要です!

あとは硬い直線でなく、しなやかな「微妙な曲線」がエレガンスのコツ・・・でしょうか。

でも実は、上の2つの例ほどまで飾っていない文字で、段落の間などで使っている程度の「少し引き伸ばした」もの(例:右下)も、かなり好きなのです。

なんだか・・・好きなんです。

いいんですよね、なんだか。

 

さて、本文です。

書体の高さは、常に「ペン幅の何倍分」という形で、書体によって大体決まっています。

私達はそれをX-hight(エックス・ハイト)と呼んでいます。

今回はペン幅を1mm弱に削った細い物を使いましたので、Xハイトは3mmくらい。

細いペン先は、文字が安定しません。

となると、必要なのはやっぱり、練習&練習&練習です。

とても長い文章でしたが、そらで言えるようになるほど、何十回も練習しました。

おかげで今は、この書体に少し自信を持てるようになっています♪

苦労の甲斐あり、かしら。

とは言え、上の拡大写真を見ると、やはり少し乱れてるなと反省する点がありますけどね。

 

最後に少し表紙の事を。

この表紙、あまり見てもらえないのですが、実はとても気に入っています。

紺色の紙に、金粉で書いただけ。

挿絵も、SONGつまり「詩」の象徴である「白鳥」を線画で描いただけ。

でも、気に入っています。

トマス・キャンベルの文字も悪くない感じ。

実は苦手にしていたゴシックテクスチューラでしたが、このタイトルは悪くない感じです♪

でもこの写真だと「ひげ」が見えないですね。ゴシックテクスチューラの「ひげ」。

大切なのに・・・。

ここでは「B」にしか付いていませんが、金粉で書いた割にはキレイに書けたんですよ。

私は「ひげ」と呼んでいるアセンダ−の細い線は、なんと言う名前なのでしょうね。

追加:「ひげ」=「ヘアライン」でした。

 

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