“ William Tell ” 2007年 「文字の歴史展(ストラディヴァリウス・サミット・コンサート会場)」出品作品 2008年2月 第36回國際書道連盟展 準特選賞 受賞作品 【書体】ロマネスク体(=12世紀のコンプレスト体)、ロマネスクスタイルの拡大文字、ルスティカ体 【材料】ファブリアーノ細目・羽根ペン・ガッシュ・金箔・金粉 他
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原稿で悩んで時間がかかり、「本番に入れるのはいつ!?」と途方にくれた記憶がある作品☆ 2007年のストラディヴァリウス・サミット・コンサート会場での作品展示に向けて完成させました。 最終的には大慌てでしたが、悩める部分は全て「12世紀に還る」をテーマに纏め上げた作品です。 今回は、いつもにもまして、時代の特徴を意識して作成しました。 そう伝えると「え、そうなの?」と聞き返されることも多かったのですが・・・そう見えない? 文字も、使った色も、飾り文字のデザインも、すべて初期ゴシックの特徴的なものなんですよ!! 始めてカリグラフィーに触れる方には「面白い!」と、そして文字の歴史に興味がある人から見て「12世紀って感じね!」と言ってもらえるような作品を目指しました。 いかがでしょう(^−^)♪ |
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特に飾り文字のデザインは、軽やかなフィリグリーや植物をデフォルメした伝統的な飾り方をベースにしています。 そしてポイントにのみ、写実的な挿絵を織込みました。 ミニアチュールと言われる細かい挿絵や、写実的な絵が描けることは、イルミネーターの最大の“腕”披露になります。 「これ(全体の飾り方)が12世紀の装飾方法ですよ!」 「ここ(写実的な部分)が、物語のポイントですよ!」 とはっきり示すことを心がけました。 じっくり感じていただきたい作品です。 さて、この作品の内容は「ウィリアム・テル」です。 実はスイス建国の物語だとご存知ですか? この作品で 帽子はTellの敵・ゲスラーの象徴となっています。 作品中に、私は2回 この帽子を描きました。 1つ目の帽子は、悪の象徴ドラゴンをデザインしたTの飾り文字にて、横線の代わりとして(←画像左)。 2つ目もTで、傾いた縦線に帽子が横線代わりに(画像上↑)。 |
文頭の大きな飾り文字“ W ”の一部を弓と矢に。 そこでリンゴを射抜いた金色の矢が、後半に入って、2度目に登場する帽子を掛けた棒を倒します(=敵を倒す)。 写実的な部分をたどると、なんとなく、なんとなーく物語を理解できるようになっています。 これらの12世紀の文字を、一度目に学んだのは、私がカリグラフィーを始めてちょうど1年経った頃であったと記憶しています。 「時代的に紙などが不足し、文字がどんどん細く押しつぶされて、やがて縦線だけの文字になっていく。その途中の文字がこのロマネスク体(12世紀のコンプレスト体」」という事実に驚愕し、大感激しました。 その移り変わりや特徴が、とてもわりやすい書体ですよね。 だから、特にこの時代の文字を人に説明するのが、私は好きです。 新しい世界に触れて、あの時の私と同じ感動を得た人の、喜ぶ顔が見られるから。 こうやって文字や、飾り文字デザインの移り変わりを歴史に照らし合わせながら見ていくと、歴史はごく自然に、しずかに、確実に進んできたものなのだと実感させられます。 長く愛されるものは、生活や時代に沿って生みだされ、周りにあわせながら成長するものなのですね。 この飾り文字から、さらに発展すると、洗練された華やかなゴシック文字や、ゴージャスな金彩とミニアチュール、または美しい蔦の絡まったような装飾などを駆使した、中世ヨーロッパ芸術の花の時代に入ります。 今、制作中の作品は、飾り文字中心の作品。 飾り文字中心って、私の得意とするところではありませんが、勉強になりますから。 次回の展示会に間に合わせて作成しますので、ぜひお楽しみに! |
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