“The Art of Beauty”
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メロヴィンジアン体だけに取組んだこの1年間の集大成、最終課題の羊皮紙の長文作品です。 原文は 「女性の美」 について精神面と表面の両方からふれた、ローマ帝国時代のベストセラー本です。 構成の一つ一つに工夫をこらして、時間をかけ丁寧に作りました。 |
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この課題では 【大きな羊皮紙の使用】 【長文のレイアウト】 【ミニアチュール】 の3点が、主なポイント。 使用したヤギの羊皮紙は、Love Letterで使用した子牛とは違い、とても書きにくく、皮の肉側と毛側のどちらを使うかで迷いました。 「1:弾いてすべる」と「2:にじんで引っ掛かる」の究極の選択の後、結局他の皆さんとは違う、1の毛側に書くことに。 この書き難さもプレッシャーを高め、なかなか書き出す勇気が出せず。 羊皮紙はとても高値な物ですし、一発勝負の緊張に負け、原稿を目の前にして ただひたすら “眺めるだけの日々” が続きました(苦笑) でも、思い立ってしまえば早いものです。 文字だけは一晩で書き上げました。 さて、この作品の本文はルクソイ体を中心に書いています。 (メロ1期目の課題、ツバキの飾り文字の“The Thing…”と、構成的に ほとんど同じ書体を使っていますのでご参照ください。) ルクソイ体は、メロヴィング王朝時代に使われた数々の書体の中でも、比較的 読みやすく安定した小文字書体です。 |
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とはいえ、やはり初めは難しくって・・・必死で練習した甲斐もあり、やっと手に馴染んできた感があります。 リガチャーや変形の多い、学び甲斐のある書体。 下の画像に見られるように、長いアセンダーが一筆書きの珍しい丸いスタイルです。 |
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↓ 初めて使った緊張のプラチナ箔と、ルクソイ体本文の一部 ↓ |
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第1・3はオーソドックスですが、2段落目は少し気を遣うレイアウト。 中央に大きくプラチナ箔 (タイトルに合わせて真珠で囲んだ鏡を表現) を入れたので、文字の間隔やリガチャーの使用箇所・方法が難しかったです。 イルミネーション中級のクラスで得た知識や技術を生かすため、挿絵などにも気を遣いました。 出来る限り多くのシンボルを使い、それぞれに意味を持たせてあります。 タイトルにArtの神様のシンボルであるフクロウとオリーブ、Beautyの女神の象徴である海と真珠を。 (memo : この真珠は、上記の鏡の周囲にも使っています。) 2つの単語:ArtとBeautyの色合いの違いに迷いましたが、ある『理由』で選んだ「茶色」が助けてくれました。 |
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その『理由』は右の画像、“NOW”の飾り文字にあります。 「きっと私にとって記念の作品になる(しなきゃ!?)」という思い・・・と言うか覚悟?気合?のために、最初の飾り文字に大きく自分の紋章(元の紋章はコチラ)をアレンジして入れました。 色合いは、まずこの紋章を中心に、全体を決めていきました。 “NOW” の “W” などは、冠飾りであるチューリップが生えている地面をイメージした 「土の色(茶のグラデーション)」 に。 それに合わせて、残り2つの段落の初めを飾る大きな飾り文字など、キーポイントを茶色で同じスタイルにしてあります。 |
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他の飾り文字にも同じ茶色を意識して使う事で、自然的な柔らかい雰囲気を目指しました。 自然から「美」を取り入れた時代の「美のレシピ」・・・表現できたかな。 今回はたくさんの色を使いましたが、おかげで統一感を出す事が出来たように思います。 1・2段落目が「精神的な美」についての話なのに対し、第3段落目は「表面的な美」について記されています。 内容はクリームの作り方! 様々な「え?」というような材料などが出てきます(実際に使われていたそう!)。 今回の作品では、それらの頭文字を、全て 「そのもの」 を表す小さな飾り文字にしてみました。 下の一覧はその一部で、飾り文字の高さは、どれも約1cmです。 |
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Egg (卵) |
この材料で本当に肌は白く美しくなり、シワもなくなるのか? ・・・という疑問はさておき、ずいぶんと種類がいっぱいありますよね。 いつの時代も 女性は美の為に苦労を惜しまないものなのですね。 さて、その中でも、お気に入り♪で自慢!なのが、下の2つのHです。 下の説明を見る前に、解って頂けるとうれしいのですけど・・・☆ 左:Honey(ハチミツ) → 全体で4mm位の、小さくてかわいいハチ♪と木製のハニーディッパーからたれ落ちるハチミツ 右:Horns(牡鹿の角) → 自然に抜け落ちたシカのツノと、金箔の縁取りに生やしたシカの毛 「グロテスクで怖い」・・・かな? 私としては、これだけ細かく描けたのがうれしいのです。 |
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Vetches (カラスノエンドウ) |
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Barley (大麦) |
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Whiteness (白さ) |
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Sleep (寝る) |
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Narcissus (水仙) |
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Gum (ゴム) |
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どうでしょう、苦手だったイルミネーションも、少しずつは成長しているように思うのですけれど・・・。 どうかしら。 今回の作品は、文字に関しては「緊張した」「書きにくかった」「“The Thing…”の項目と同じ」以外には、あまりコメントすべき点が無いのが残念ですが、イルミネーションについては、もぅ少しあります** 今回の課題には、もう一つ求められたものがありました。 それは、「金箔で盛り上がった1mm幅の縁取りをつけた細密画を入れること」 です。 |
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もちろん、その1mmの金箔には縁取りもします。 ひー!です。 はじめは卒倒しそうになりましたが、やるしかないですよね。 そこで私が選んだのは、美の女神ビーナスと純潔を象徴する生き物の一つである「白鳥」です。 第2段落目の 「マナーが良く心美しければ、あなたは愛される」 というくだりに合わせ、白鳥は赤いバラをくわえています。 かわいい白鳥でしょ? 「満足(^−^)♪」と思っていましたが、やはり未熟のよう。 先生から、白鳥の右後方の水面の筆運びが良くないとのアドバイスをいただいて、修正する事になりました。 言われてみれば「なるほど」です。 記念に修正前の映像を載せておく事にします☆ (後日修整しました!) |
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さて、最後に一つ告白をしなければいけないと思っています・・・実はほんの少し躊躇・・・。 でも一応ご説明しますね。 それは「修正」についてです。 私は今まで、「削る」 「挿絵を乗せて隠す」 「いっそ大胆にデザインを変える」 などの方法で修正してきました。 しかし、今回使った羊皮紙の性質なのか、今までの方法では対処できない事態に・・・。 毛側を使ったからなのか、削った時に かなりの広範囲がベローッと剥がれて薄くなってしまったのです。 ベローーーッと! コワイー! そこで先生にアドバイスを求めたところ、「羊皮紙と同じ色を作って塗る」という、今までのMGスクールの教えでは「やっちゃいけないこと」のランク1位にも匹敵する回答が。 yayo 「い、いいんですか、大丈夫ですか、こわいですーーー!」 先生 「大丈夫です。この紙の同じ色、もう作れるはずです。」 yayo 「う・・・(プレッシャー)。はい・・・。」 かなりの抵抗がありましたが、やるしかない状況でしたので挑戦することに。 塗るだけでは、まだ少し気になったので、急遽予定外のオリーブ(タイトルの ”Art” に合わせて)を描きました。
左が修正後の完成時。 右は左の画像を、修正した位置がわかりやすいように色調を調整したものです。 かなり広い範囲でしょ。 オリーブの下に、薄く黄色くなっている部分が、剥がれて薄くなってしまった部分です。 ひどいですよね。 一気にベローッとめくれた時には、ショックすぎて 悲鳴すら出ませんでした。 あのままにならなくてよかったです。 ************** 長い長い1年間でした。 この作品を完成させ、「やり遂げた」という充足感でいっぱいです。 先生からも(ほぼ)OKを頂き、みなさんにも作品展にて見ていただく事が出来ました。 本来なら「よし!もっとがんばるぞー!!」となる所ですが、すっかり腑抜けになってしまったほど☆ でも、 こうやって多くを学ぶ事が出来る環境にあるのは、本当にありがたい事ですよね。 文字が私達人間に与えた影響や、果たした役割はとっても大きなものがあります。 文字の歴史や、過去の人々がそこに求めた思いを知る事は、本当に貴重な経験です。 あまりに貴重な経験をしていると、必死で白目をむく状態のまっただ中にいても、やはり色々と考えさせられます。 放っておいたら消えてなくなってしまう、忘れられてしまう、文化としてどんどん衰退し受け継がれる事はなくなっていく こういったものは、本当は「知って満足する」だけではいけないのかもしれません。 もっともっと精進して、いつかは誰かに伝えていかなければいけないのかもしれません。 完璧に伝える事が出来なくても、私達のところで止めない努力が必要なのかもしれませんよね。 もしかしたら、それが文化・芸術を学ぶ者の つとめなのかもしれないと、考えさせられた一年でした。 まだ・・・自信ないような、まだ・・・知りたいことの方が多いような。 私の気持ちが変わっていくのはいつなのでしょうか。 |
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